家庭のあたたかさを考えるとき、
いつでも思いだすのは、恩師が、結婚式のとき、
与えてくれた祝辞のなかの一節である。
「男は力をもて――
妻が望むことは、なんでも叶えてやれるだけの
力をもたねばならぬ。
また、新婦に一つだけ望みたいことがある。
それは、主人が朝出掛けるとき、晩帰ったときには、
どんな不愉快なことがあっても、にっこり笑って、
笑顔で送り迎えをしなさい」
――平凡といえば平凡な教訓だが、
いざ実行にうつすとなると、なかなか至難なことである。
ときがたつにつれて、これほど人生の機徴をついた、
味わいのある家庭生活の教訓はないと思うようになった。
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